
どんな店にしていきたいか?~OnTheRoad 第103回
僕が12年間店長を務めたらーめん屋には、
『下積み禁止』
という少しおかしな社是があった。
つまり、飲食業として必要な
『修業』
はすっとばして、
さっさとらーめんを作らせろ、
という会社からの命令だった。
それは当時の会社での
「大祐は人を育てる事が出来ない」
「大祐は人から嫌われる性格だ」
という評価からそう決まったのだが、
今ならそれはとても拙速で本当の
現状を見ていない結果だと解る。
だがここで今なら解る当時の会社の
問題点を論じる事はアンフェアなので
控えさせて貰う。
『下積み禁止』という『社是』を履行した結果、
どんな結果が生まれたか?
『らーめんへの愛がないスタッフ』が、
山ほど生まれた。
・
例えば、ボクシングを思い浮かべて欲しい。
基本のワンツーを打てないボクサーが
ロングフックやショートアッパーを
打てるだろうか?
もし打てたとしても、
プロの試合で勝利を手にすることが
出来るだろうか?
どんな世界でも基本が一番大事なのだ。
そしてその基本は徹底した日々の
ルーティンワークからしか身に着かない。
若き才覚溢れるスタイリストのしょうこちゃんは、
きっと何度も何度も悔し涙を流し、
何度も何度もシャンプーやカットの練習をし、
我を忘れるほどに先輩の技術を盗もうと
何度も何度も先輩の仕事を見続け、
きっとプライベートの時間も仕事や
美容やファッションについて考え続けたのだろう。
それはそれはとても苦しい修業だったと思う。
でもその日々のルーティンワークがあったからこそ、
僕は「この人に全て任せよう」と
思うほどの説得力のある仕事が
出来る様になったのではないだろうか?
そしてなぜ、そんな苦しくなかなか
ゴールの見えないルーティンワークを
続ける事が出来たのか?
美容師に憧れ、
美容師を夢見て、
美容師という職業を愛していたから
ではないだろうか?
・
愛こそが全てなのだ。
・
らーめんという食べ物は、
他の飲食業の中では少し異色だ。
まず、覚える仕事が圧倒的に少ない。
和食や鮨屋、割烹、レストラン、蕎麦・・・
それらの飲食業は一人前になるには
何年も修業する必要があるだろう。
だがらーめんやらーめん一品を作れれば
一人前になれるのだから、
センスのある人なら独学でもどうにかなる。
僕も修業したとはいえ、
このブログを読んでくれている
方ならすでにご存じだと思うが、
修業先をケンカの勢いで辞めた僕は
ほぼ独学で豚骨らーめんを作り上げた。
そしていま新たに豚骨以外の
らーめんを作ろうとしている。
完全に独学だ。
だからこそ、
僕は修業経験が短いからこそ、
らーめん以外の料理を独学で学び、
自分の経験不足を補う努力をしてきた。
そして今でも気持ちは『修業中』だ。
だから僕は自分にたくさんの
『ルーティン』
を課している。
それは全て、
らーめんへの愛ゆえの当然の努力だ。
以下、次回に続きます。
*写真は僕が自分の母親の為に
作った『グリーピースソースのファルファレ』です。
パスタは冷蔵庫の余った食材を
使い切るためによく作ります。
こうした事が特別らーめんに
活きるとは思いませんが、
感覚は常に磨かれて
アンテナは常に伸び続けます。
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