
翼を授ける~OnTheRoad 第88回
自転車は間違いなく僕に翼を授けてくれた。
ド素人でも本気で踏み込んだら
時速40キロくらいは軽く出る。
その気になったら100kmくらいの
距離はすぐに走れる様になる。
スポーツバイクという『道具』は
使っているとはいえ、
ペダルを踏み込む動力は間違いなく
自分の体力以外はないのだ。
ランニングやウォーキングでは
絶対に味わう事の出来ない
距離とスピードと風を
自転車は簡単に味あわせてくれる。
僕は33歳にして一瞬にして
自転車に恋に落ちた。
ここまで自由を味あわせてくれる
乗り物は僕にとっては自転車しかなかった。
・
僕はダムが好きだ。
昨年の夏、
金沢に帰ってきてすぐに
手取川ダムまで行ってきた。
僕の家から手取川ダムまでは
片道70キロほど。
65㌔ほどまでは緩い坂が続き、
残り5㌔で激烈な坂になっていく。
本格的にスポーツバイクに乗っている
方ならどうってことない距離なのだろうが、
当時体重97㌔で海辺の町での仕事に
がんじがらめで3年ほどほとんど
自転車に乗っていない僕には
かなりの挑戦だった。
最後の方は歩いた方が早いんじゃないか?
というくらいのスピードだったが、
なんとか一度も足を着かずに
手取川ダムまで辿り着いた。
神奈川県に住んでいる時も
宮ヶ瀬ダムまでよく行った。
水の目一杯張ってあるダムは本当に美しい。
僕はダムの水面を覗きこむ度に
思い浮かぶ一つの思念がある。
「人間は、今すぐ、このダムに
身投げを出来るほどに自由なのだ」
と。
もしかするとダムの底は
その昔人々の生活と人息れの充満する
集落だったかもしれない。
水の底に沈むかつての集落は
水の底で永久保存されているのだろうか?
それとも朽ち果てているのだろうか?
それとも新しい生態系を生んでいるのだろうか?
僕はその中に溺れて沈んでしまいたいと
願う衝動の様な気持が沸き起こる。
それはタナトスの様な解りやすい
心理学の言葉ではなく、
途方もない自由への憧れなのだ。
・
僕達は、
ダムの底に
身投げする
自由すら
持っている。
・
身勝手な陶酔に酔いながら、
白山山脈が吹きさらす
風に我を取り戻す。
決して死にたいわけではなくて、
自由でありたい。
その象徴がダムであり、
自転車なのだ。
自転車は僕たちを
どこまでも連れて行ってくれる。
僕に翼を授けてくれたのだ。
以下、次回に続きます。
写真は海辺の町一
ピンクの似合う男(自称)
の名を欲しいままにしていた頃の
僕です。
3~4年前。
来ているTシャツは僕の好きな
サイクルアパレルのRAPHA(ラファ)です。
今はこの頃ほどお腹の弛みはありませんよ!
自転車は僕にオシャレをする
気持ちも取り戻してくれました。
痩せてこのTシャツ切れる様になって嬉しい。
今から金沢一ピンクの似合う男を
目指します。
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